福利厚生の歴史
終身雇用制の中で、企業と従業員が共に作ってきた福利厚生
福利厚生はそもそも「低い賃金の補充」「社会保障の代替」「労働力の確保」といった目的でスタートしており、多くの企業が日本的な終身雇用制度を守ってきたことから、従業員に長く勤めてもらうために必要な施策となってきた。春闘などの労使交渉の場でも、福利厚生に対する要望が出されるなど、従業員にとっても当たり前に主張できる一つの権利となっていた。
高度成長期から90年代バブル期までは、資金力のある大手企業では、寮・社宅や保養所などの不動産(ハコもの)を自社で持つところが多く、それが資産運用の一つの形ともなっていく。また、福利厚生制度の運営も、自社内に人員を配置し、申請から手配まで内部で行う体制が多かった。このころまでは、企業の右肩上がりの成長が、そのまま福利厚生サービスにも反映されてきたといえる。
2000年代以降の福利厚生
流れは「ハコもの」から「ヒトもの」へ
高度経済成長期からバブル期にかけて、大手企業が積極的に保有していた社員寮や保養所。こうしたハコものは2000年代以降になると、老朽化による修繕をはじめ、多額の維持費がかかるようになった。
これまでの金融危機やアウトソーシングの台頭で経費削減に向けた動きに拍車がかかり、ハコものからの撤退が相次ぐようになる。福利厚生は、労働者の多様なライフスタイルに合わせたヒトものへと変化の一途をたどる。
ユニークな福利厚生の登場
2000年代前後に登場したのが株式会社ベネフィット・ワン、株式会社リロクラブ、株式会社JTBベネフィット、株式会社イーウェルといった、現在の業界の第一線を走る大手福利厚生アウトソーシング企業である。この他にもアウトソーシング企業の台頭が目立つようになっていった。
2010年代になると、ユニークな制度を取り入れることで他社との差別化を図るなど、福利厚生は企業ブランディングの面で新たな付加価値を提供する要素が色濃くなっている。
ユニークな福利厚生の事例
アウトソーシング型福利厚生には多種多様なジャンルがある。
- キャリア、自己啓発支援
- 育児、介護
- スポーツ
- レジャー、娯楽
- ショッピング
- 健康増進
また、企業独自のユニークな福利厚生も増えてきている。以下はその一例である。
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手当拡充
パスクリエイト株式会社「早起きは1,000円の得」 始業時間より1時間以上早く出社すると1日500円、2時間以上早いと1日1,000円が支給される。 - 女性活躍
株式会社サイバーエージェント「macalon」 女性社員が出産・育児を経ても働き続けられることを目指し8つの制度(エフ休・妊活休暇・妊活コンシェル・キッズ在宅・キッズデイ休暇・認可外保育園補助・おちか区ランチ・ママ報)をパッケージ化したもの。 - 健康
株式会社Cygames「健康サポート制度」 社内にマッサージルームを完備(施術無料)。年1回、会社負担でインフルエンザ予防接種を受けることができる。 - キャリア、学習
株式会社ゆめみ「勉強し放題制度」 学びにかかる費用を無制限で利用可能。業務に直結しないものでも、会社が100%支援している。
この他にも、マッサージルーム、近隣家賃補助、SNS手当、昼寝スペースなど、福利厚生で独自のカラーを打ち出している企業もある。