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戦略的な福利厚生とは~「企業の実例」を中心に

(1)企業戦略として福利厚生

●新たな時代・環境変化に合った福利厚生施策が求められる

イメージ近年、福利厚生制度を見直す企業が増えている。その背景には、少子高齢化などの社会・経済環境の変化や、働く人の価値観・ワークスタイルの多様化、雇用の流動化や日本的雇用制度の見直しなどがある。社会保険料などの法定福利費が年々増加していることで、総額人件費管理の観点から、任意で支出する法定外福利費の圧縮・効率的運用を考える企業も少なくない。限られたコストの中でいかに従業員のニーズに合ったものを提供するのか、新たな時代・環境変化に合った福利厚生施策にはどのようなものがあるのか、以下、紹介していこう。

●近年の福利厚生施策の特徴

資金や施設などの面で大企業に劣るITベンチャーや中小企業を中心に、戦略的な福利厚生施策として、「良好な企業イメージを形成する」「従業員間のコミュニケーションや組織の活性化を促す」「チャレンジする風土を作る」といったことをコンセプトとして打ち出すケースを見かける。従業員の潜在的なニーズを掘り起こし、どうすればモチベーションを高く持つことができるかを考え、自社独自の戦略的、かつユニークな福利厚生施策を打ち出すことによって、人材の採用と定着に効果を発揮している。

【ITベンチャー・中小企業の例】
良好な企業イメージを形成する どの分野に力を入れているかによって、企業の思い・価値観を社内外に発信することができる。人材の採用・定着にも効果がある。

例)健康管理・メンタルヘルスサポート
→ 従業員の健康、人間らしさを大切にする

例)資格取得奨励金・自己啓発支援
→ 従業員教育に力を入れている
従業員間のコミュニケーションや組織の活性化を促す 限られた費用の中、目的や独自性を持って施策を行う。

例)活性化を促す施策
→ 従業員旅行、運動会・イベント、飲みニュケーション補助、社内SNS

例)独自性を打ち出したユニークな施策
→ デート支度金・失恋休暇、バーゲン・映画半休
チャレンジする風土を作る チャレンジするには「安心」が必要。福利厚生を充実させることで安心感を醸成、チャレンジを促す。

例)安心とチャレンジを合わせて行う
→ リフレッシュのための休日・休暇、家賃・通勤補助、食事補助、資格手当、能力開発支援、教育機会の提供(学び休暇、資格取得補助)

一方、大企業では寮・社宅などをはじめとする既存の福利厚生メニューを見直す一方、カフェテリアプランを導入し、より多くの従業員がメリットを享受できる仕組みへと改定する動きが目立つ

【大企業の例】
  A社(食品メーカー・2000人) B社(化学メーカー・5000人)
カフェテリアプラン導入で
法定外福利厚生費を10%削減
社宅・寮など既存施策を見直し、
大型のカフェテリアプランを実現
概要 従来制度を全面的に見直し、基本メニューとして新たに設置。その上でカフェテリアプランを導入、「ポイント利用メニュー」とポイントを利用しない「割引メニュー」の三本柱へと福利厚生制度を再編した。 社宅・寮制度をはじめとする既存の福利厚生メニューを見直し、そこから得た原資で大型のカフェテリアプランを実現。より多くの従業員がメリットを享受できる仕組みへと改定した。
改定前 標準モデルを想定した制度を一律に提供していたが、社員のニーズや価値観が多様化する中、コストの割に利用度の低かった契約保養所をはじめ、制度の受け止められ方に差が生じていた。 社宅・寮を中心とした現物支給に受益が偏在、可変性に乏しく、個別のニーズに対応し切れていなかった。制度ごと個別の企画運営で、非効率性が問題となっていた。
改定後 事業所間で運用の差があった「共済会制度」などを廃止。代わって、「乳幼児看護休業制度」などを新設。カフェテリアプランでは、一人当たり年間450ポイントを付与(4万5000円相当分)。 カフェテリアプランは、個人の自由意志をできるだけ尊重する制度設計とした。社宅・寮制度の改定では、入居基準の見直し、使用料の引き上げ、選択型社宅制度導入を行った。
効果 法定外福利厚生費を約10%削減。ポイント消化率は95%に達した。制度への意見や疑問に常時対応するための社内サイトを運営している。 法定外福利厚生費は制度導入の検討開始時点よりも大幅に減少(約50億円→約35億円)。カフェテリアプランの利用率も年々上がり、現在は約90%。
担当者のコメント 会社としての福利厚生制度に対する考え方をしっかりと決めておくべき。法定外の福利厚生の考え方は各社各様なので、自社なりの確固とした考えを持つことが大切。他社ではこうだからでは、社員は納得しない。そのためにも導入に当たっての制度説明会は実施の2~3ヵ月前から開始し、複数回に渡って全社員を対象に行った。 福利厚生のメニューは多岐に渡っている。一つひとつのメニューの改廃だけに目を向けるのではなく、福利厚生制度全体のビジョンを持ち、大きくアプローチした。福利厚生制度全体で考えて、社宅だけで見ればデメリットがある人でも、一方でカフェテリアプランの付与ポイントを大きく取れるメリットもある、というように結果として平準化させるスタンスを取って改定を進めた。

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