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専門家コラム

第54回 社宅制度と社会保険料

2018-09-10 テーマ: 人事給与(ペイロール)アウトソーシング

前回は、社宅制度を導入した場合の所得税の計算方法について説明しました。前回に引き続き、今回は社宅制度を導入した場合の社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)の報酬の考え方をみていきたいと思います。

 

 

<社会保険における現物給与>

 

従業員が会社から社宅を借りていると、会社はその従業員に対して、利益を供与していることになります。社会保険では、従業員が得ている利益を一定の方法で通貨に換算し、その相当額を報酬に合算をして標準報酬月額を決定することになります。

標準報酬月額に合算する現物給与の種類には、「住宅(社宅や寮など)の貸与」「食事」「自社製品」「通勤定期券」などがあります。自社製品や通勤定期券など「モノ」で支給される場合は、原則として時価で換算して合算します。

 

住宅や食事を現物で支給する場合は、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)に定められた額に基づいて通貨に換算します。現物給与の価額については、都道府県ごとに異なり、また毎年度見直されます。日本年金機構がホームページ上で公表していますので、随時そちらを確認ください。

 

社宅費用の全部または一部を本人が負担している場合は、「現物給与の価額から計算した金額」と「本人の負担額」の差額を報酬に合算します。そのため、現物給与の価額から計算した金額以上を「社宅使用料」などとして本人から徴収している場合には、社会保険の報酬には合算する必要がありません。

 

<社宅の現物給与の計算方法>

 

現物給与の価額表は、都道府県によって定められている価額が異なります。現実には本社と複数の支店がある会社でも、社会保険は本社で取りまとめて加入している会社も多いと思います。それでは、どの地域の価額を適用させれば良いでしょうか。

現物給与の価額は本来、生活実態に即した価額になることが望ましいため、社会保険の適用事業所となっている事業所の所在地ではなく、本人の勤務地の事業所の住所を適用するのが原則です。つまり、社会保険は本社で加入していても、札幌支店に勤務しているのであれば「北海道」の価額が適用されるということです。

 

社宅が勤務地と異なる都道府県にある場合も、勤務地の事業所の所在地により判断します。なお、派遣労働者の場合については、実際の勤務地(派遣先の事業所)ではなく、派遣元の事業所の所在地の都道府県の価額で計算しますのでご注意ください。

 

適用する都道府県により、社会保険に算入する価額は大きく異なります。同じ広さの社宅で、東京と北海道での現物給与の価額の計算方法は以下のとおりです(平成30年度)。

・東京では、 1畳あたりの単価が2,590円

・北海道では、1畳あたりの単価が1,000円 です。

 

たとえば、社宅の広さが16畳ある場合は、

・東京 :2,590円×16畳=41,440円

・北海道:1,000円×16畳=16,000円 となります。

 

社宅の使用料をまったく徴収していない場合は、この金額を標準報酬月額に含めて、社会保険に届け出をします。反対にこの金額以上を社宅使用料などとして徴収していれば、社会保険においては社宅の現物給与はないということになります。

 

計算例では広さを16畳としましたが、実際の社宅は、トイレ、台所、浴室等があります。社会保険の現物給与の社宅の広さを計算する際は、そのすべてを含める必要はありません。

社会保険の現物給与の価額の計算にあたっては、居間、茶の間、寝室、客間、書斎、応接間、仏間、食事室など「居住用の部屋」が対象になります。なお、畳のない部屋については、1.65平米を1畳として換算します。

反対に、玄関、台所(炊事場)、トイレ、浴室、廊下、農家の土間などの居住用以外の場所、あるいは営業用に使用している場所は面積に含めません。

 

 

前回説明した通り、住宅手当で支給している場合は、その全額が社会保険の標準報酬月額の算定の基礎に含まれます。社宅の場合は一定の社宅使用料を徴収していれば算入されず、仮に算入されたとしてもだいぶ少ない金額であることがお分かりいただけたかと思います。

なお、現物給与の価額が改定されたときは、固定的賃金の変更とみなされ、月額変更の判定の起算月になります。社宅を社会保険上の現物給与として届け出ている会社はご注意ください。

(健康保険組合に加入している会社では、規約で上記と異なる取り扱いになっている場合があります。加入している健康保険組合に算定方法を確認ください。)

 

次回は、社宅の場合の労働保険料の計算について紹介していきます。

鈴与シンワート株式会社 人事給与(ペイロール)アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。

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