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専門家コラム

第57回 年末調整(住宅ローン控除)の実務

2018-12-10 テーマ: 人事給与アウトソーシング

前回に引き続き、年末調整の実務について見ていきたいと思います。今回は、「住宅ローン控除」の基礎知識についてです。
住宅ローン控除は、住宅ローンの残高によって所得税額から控除額を差し引きます。直接所得税額から控除するため、影響する金額が大きくなりやすく、年末調整業務の中でも最も注意すべき箇所のひとつです。
改めて確認していただき、計算誤りのないように年末調整業務を進めてください。

 

<住宅借入金等特別控除とは>

住宅ローン控除と一般的に呼ばれることが多いのですが、正式な名称は、「住宅借入金等特別控除」といいます。
この制度は、一定の要件を満たすことが条件ですが、概略は、

1)個人が住宅ローン等を利用して、マイホームの新築、取得又は増改築等を行い、
2)自身の居住する家として使用した場合に、
3)住宅ローン等の年末残高の金額等をもとに計算した金額を、
4)所得税額から控除することができる、

というものです。

住宅借入金等特別控除の適用を受けるための手続きは、控除を受ける「最初の年」分と「それ以後の年」分とでは異なります。
年末調整で控除することができるのは、住宅ローン控除を受ける「2年目以降」になります。「最初の年」分は、必要事項を記載した確定申告書を所轄税務署長に提出して控除を受ける必要があります。

 

<住宅借入金等特別控除の適用条件>

それでは、適用条件についてみていきましょう。個人が居住用の家屋の新築、新築住宅や既存住宅(中古住宅)を取得した場合で、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができるのは、次のすべての要件を満たす必要があります。

1)新築又は取得の日から6か月以内に居住の用に供し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること。
2)この特別控除を受ける年分の合計所得金額が、3千万円以下であること。
3)新築又は取得をした住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用に供するものであること。
4)10年以上にわたり分割して返済する方法になっている新築又は取得のための一定の借入金又は債務(住宅とともに取得するその住宅の敷地の用に供される土地等の取得のための借入金等を含みます。)があること。
5)居住の用に供した年とその前後の2年ずつの5年間に、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと。

新築や中古住宅の購入のほかにも、増改築やバリアフリー工事をした場合など、それぞれ住宅借入金特別控除の対象になる住宅には要件が決まっています。この部分は非常に複雑ですが、実務上は、先ほども述べた通り、住宅借入金等特別控除の初年度に本人が確定申告をして税務署の判断を仰ぎます。そのため、これらの条件を満たしているか否かは、基本的には、会社が判断する必要はありません。

会社で確認する事項といえば、3)の後半部分「床面積の2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用に供するものであること。」です。
転勤等により単身赴任をしている場合を除き、住宅借入金等特別控除の対象となっている家屋に本人が居住していない場合は、この控除は受けられません。申告書の下段「住宅借入金等特別控除証明書」記載の住所と、本人の現住所が同一か、確認するようにしましょう。

 

<住宅借入金等特別控除に必要な書類>

年末調整で住宅借入金等特別控除を行うためには、次の書類を本人から提出してもらいます。

1)その年の分の「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」
2)その会社で初めて住宅借入金等特別控除を年末調整で行うときは「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」
なお、平成24年6月以降に交付された申告書は、下段に証明書がついていますので、1)と2)で1枚の書類になります。
3)金融機関等が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」

従業員から提出された申告書の計算が正確か確認するのはもちろんですが、実務上特に注意が必要なのは、次の2つのケースです。

1)借入金に連帯債務者がいる場合
2)住宅ローンの借り換えを行っている場合

この2つのケースでは、申告書の記入方法や計算方法が異なります。これらに該当する場合は、いずれも「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」にその旨が記載されていますので、見落とさないようにしましょう。

 

<住宅借入金等特別控除の控除期間及び控除額の計算方法>

給与計算ソフトで年末調整を行っている場合は、ローン残高等を入力すると自動的に計算されるソフトもあります。しかし、仕組みが分かっていないとミスが生じた際にリカバリーすることができません。
住宅借入金等特別控除は、居住した年により、上限額や控除される割合、控除の対象となる年数が異なります。基本的には、申告書に沿って計算していけば、間違いはないのですが、
次の点は誤りがないか念のため確認してください。

1)「家屋等の床面積等」と「居住用部分の床面積等」の割合が正しいか
2)「借入金の年末残高」と「家屋等の取得対価の額」の少ない額を計算に使用しているか
3)「計算の基礎となる借入金等の年末残高」は上限額以下になっているか
4)最後の「住宅借入金等特別控除額」は百円未満を切り捨てているか

 

住宅ローン控除は、複雑なように見えますが、チェックするポイントをしっかりと押さえておけば、それほど難しいものではありません。
最初に述べた通り、計算ミスを犯すと、税額に大きな差が出てしまいます。実際に業務を行う場合は、2重、3重の確認作業をするようにしましょう。

鈴与シンワート株式会社 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。

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