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専門家コラム

第55回 社宅制度と労働保険料

2018-10-09 テーマ: 人事給与アウトソーシング

前々回と前回では、社宅制度を導入した場合の所得税や社会保険料の計算方法について紹介をしてきました。今回は、社宅制度を導入した場合の労働保険料(労災保険料と雇用保険料)の計算方法についてみていきたいと思います。

 

<労働保険料の計算について>

 

労働保険の保険料は、すべての労働者に支払われる賃金の総額に、事業ごとに定められた保険料率を乗じて計算します。労災保険料や雇用保険料の徴収に関することは、「労働保険料徴収法」という法律でルールが定められています。

 

この法律での賃金の定義は以下のようになっています。

 

「賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」

 

この定義によれば、前回紹介をした社会保険料の計算と同様に、労働保険の賃金総額には現金給与だけでなく、「現物給与」も含まれることになります。

ただし、任意的なもの、恩恵的なもの、実費弁償的なものは、「労働の対償」として支払われるものではないので、賃金には該当しません。

 

<社宅制度における労働保険料の計算方法について>

 

「現物給与」も労働保険料の算定の対象となり、社宅の供与も原則的には労働保険料の対象になります。それでは、社宅を供与している場合の計算方法はどのようになるでしょうか。

社宅については、会社が負担している費用すべてが現物給与としてカウントされるわけではありません。これまで紹介してきた所得税や社会保険料の計算方法と同様に、一定の基準が設けられています。

 

労働保険料の計算においては、「従業員から社宅の費用を徴収しており、かつ、その徴収金額が、実費の3分の1以下であるときは、その差額部分を賃金とみなす。」とされています。

逆を言えば、従業員から徴収している実費が家賃の3分の1以上であるときは、労働保険料の算定の対象とはならないということになります。

 

例えば、家賃の実費が15万円で、従業員から徴収している家賃が4万だった場合は、3分の1である5万円を下回っているので差額の1万円(5万円-4万円)が賃金としてカウントされます。

一方で、6万円を本人から徴収している場合は、3分の1を上回っているので賃金としては一切カウントしないことになります。

 

ただし、社宅を利用していない従業員に対して、均衡手当(社宅を借りている従業員と借りていない従業員のバランスを保つための手当)が一律に支給される場合は、社宅を利用していることによる利益が現物給与とみなされます。

 

社宅の供与が労働保険料の「現物給与」とみなされる場合には、その価額が「雇用保険料」の対象にもなります。そのため、たとえ現金で支給していなくとも、給与で本人から徴収する雇用保険料の計算においては、その分も加算して算出しなければなりません。

現物給与は、給与明細上に記載されないことも多いので、間違えやすい点です。ご注意ください。

 

 

 

3回にわたり、社宅制度を導入した際の「所得税」「社会保険料」「労働保険料」それぞれの考え方についてみてきました。

社宅制度は、金銭的には住宅手当を支給するよりもメリットがあると言えます。しかし、「所得税」「社会保険料」「労働保険料」それぞれで考え方が異なるため、これらをよく理解した上で家賃相当額を設定しないと、ケースによっては給与計算の方法が複雑になることもあります。

すでに社宅制度を取り入れている会社では、「所得税」「社会保険料」「労働保険料」の3つがそれぞれ適正に計算されているか、あらためて確認してみてください。

鈴与シンワート株式会社 人事給与アウトソーシングS-PAYCIAL担当顧問
経営者の視点に立った論理的な手法に定評がある。
(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサル タント、社会保険労務士、中小企業福祉事業団幹事、日本経営システム学会会員。

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