年金一元化
[ネンキンイチゲンカ]
職業別に分かれている公的年金制度を一本化し、保険料、給付水準の仕組みを同じくすることです。厚生年金と共済年金の統合を目指すのか、国民年金を含めたすべての公的年金の一本化を実現させるのか、さまざまな議論があります。
年金一元化のケーススタディ
政府・与党が目指すのは<br />被用者年金の比例報酬部分の統合
政府・与党案では被用者年金の比例報酬部分の一元化に焦点を当てて論議が進められています。被用者年金とは、サラリーマンが加入する厚生年金と国家公務員などが加入する3つの共済年金の総称です。また比例報酬部分とは全国民共通の基礎年金に上乗せされる給付のことです。つまり政府・与党の一元化論は、国民年金にはない被用者年金の比例報酬部分の統合を目指すものと言えます。
経済財政諮問会議でも国民年金と被用者保険の一元化については、条件整備の問題や自営業者などに所得比例保険料負担を求めることができるかなど、問題点を指摘する意見が出されました。また、厚生年金と共済年金の一元化は比較的容易であると考えられるため、まずこれらの一元化を実現すべきとの意見があったことも併記されています。
しかし近年、厚生年金の対象者が減る一方、国民年金の対象者となる雇用者が増加して、年金制度と就業構造とのギャップが拡大しています。派遣社員やアルバイトなど雇用形態の多様化が進み、短期間労働者が増えているためです。国民年金対象者の就業形態別内訳を見ると、自営業者528万人に対して、雇用者は729万人で全体の約3分の1を占め、アルバイトも168万人となっています(社会保険庁調べ、2001年実績)。このため国民年金の対象となっている雇用者を含めた被用者全体の年金制度の統合を図るべきだとする意見もあります。
今年2月の党首討論で民主党の岡田代表は「国民年金を含めた年金の一元化を考えると理解していいのか」と迫りましたが、小泉首相は「できればそれが望ましいが、その過程で解決しなければならない問題が実に大きい」と述べ、議論は平行線をたどりました。このように年金一元化には広範囲な論点があります。議論をさらに進化させて、国民から信頼される確固とした年金制度を構築する必要があるのは言うまでもありません。