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退職金前払い制度
[タイショクキンマエバライセイド]

退職金を月例賃金や賞与に上乗せして前払いする制度。従業員から見れば退職金を在職中に受け取る制度です。企業にとっては人材引き止め効果は減少するものの、将来の退職給付債務を圧縮できるメリットがあります。

退職金前払い制度のケーススタディ

松下電器が若手社員を対象に導入<br />退職金としての意義を失う危惧も

勤続年数が増せば増すほど支給金額が増える退職金制度は、高度成長下の人材不足時代には、従業員の定着を促すという意味で大きな効果がありました。しかし昨今、多額の退職金給付債務が企業財務を圧迫、従来の退職金制度の見直しに着手する企業が増えています。

そうした中で松下電器産業が1998年入社の新入社員から導入して注目を集めたのが退職金前払い制度です。新入社員は退職金を一時金として受け取る従来型の制度を選ぶこともできましたが、44%が「前払い」を選択。その割合は年々増え続け、2002年には60%を超えました。

企業にとって「積立不足問題が発生しない」「企業への貢献をすぐに賃金に反映できる」「損金として計上できる」などのメリットがあります。しかし従業員にとっては税法上の優遇措置が受けられないため、所得税、住民税、社会保険料などの計算基礎になってしまい、手取り額が減少するという大きなデメリットが発生します。このため不利益分を追加負担している企業もめずらしくありません。

制度移行にあたっては、従来の厚生年金基金、適格退職年金を解散したり解約し、確定拠出年金と併用して導入するケースが一般的です。カジュアル衣料のファーストリテイリングは、適格退職年金を解約、2002年9月から確定拠出年金と前払い制度の選択制に移行しました。総合商社の日商岩井(現双日)も退職金制度を廃止して厚生年金基金を解散、前払い制度と確定拠出年金を導入しています。確定拠出年金の拠出限度額を超えた額を前払いしている企業もあります。

退職金前払い制度は「資金用途の自由度が増す」「転職しても不自由が生じにくい」といった理由で、若い従業員の意識にも、それなりにマッチした制度といえます。また「遠い将来、就職した企業がどうなっているかわからない。今もらっておくほうが得だ」と考える若い人が増えているのも確かです。しかし一方で「若いうちは給料も安いので、前払い分を使い切ってしまい、退職金としての意義が失われるのではないか」との批判もあります。あくまで退職金であることを忘れないように、企業は規定などを設けて、その位置づけを明確にしておく必要もありそうです。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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