出生時両立支援助成金
[シュッセイジリョウリツシエンジョセイキン]
「出生時両立支援助成金」とは、男性従業員が育児休業を取得しやすい制度の導入や職場風土醸成の取り組みを行い、実際に男性従業員がその制度を利用して育児休業を取得した企業に支給される助成金で、「イクメン助成金」とも呼ばれています。仕事と育児の両立を望む男性と両立支援に取り組む事業主を後押しするために、2016年度から5年の時限措置として新設されました。過去3年以内に男性の育休取得者がいなかった企業を対象に、一人目の取得者が出れば、中小企業は60万円、大企業は30万円、二人目以降は一律15万円が支給されます。
出生時両立支援助成金のケーススタディ
男性の育休取得を促進する“イクメン助成金”
職場の雰囲気づくりと取得実績が支給要件に
厚生労働省が今年7月に発表した直近の雇用均等基本調査によると、2015年度の男性の育児休業取得率は2.65%で前年度より0.35ポイント上昇し、1996年度の調査開始以来、過去最高となりました。しかし、男性の育休取得率を20年度までに13%に引き上げるとする政府目標には遠く及ばず、依然、低水準にとどまっているのが現状です。同省の調査では、男性が家事・育児に関わる時間が長いほど第2子以降の出生割合が高い傾向にありますが、共働き世帯が増える一方で、日本の男性の家事・育児時間は欧米諸国の3分の1程度と短く、出生率回復のボトルネックになっていると言われています。
そうしたなか、男性労働者が育休を取得しやすい職場環境を整え、実際に一定の育休を取得させた事業主を対象とする「出生時両立支援助成金」が16年度から新設されました。
「出生時両立支援助成金」の支給には、[1]男性労働者が育児休業を取得しやすい職場風土づくりの取り組みを企業が行い、かつ[2]実際に育休取得者が出ることが条件となります。[1]については、具体的に次の(1)~(3)の取り組みのいずれかを行っていることが求められます。
(1) 男性に育児休業制度の利用を促すポスター、パンフレットなどによる周知
(2) 管理職による、子どもが生まれた男性従業員への育児休業取得の勧奨
(3) 男性の育児休業取得についての管理職向けの研修の実施
また、[2]の取得実績については、男性従業員が子の出生から8週間以内に、連続14日以上(中小企業事業主にあっては5日以上)の育児休業を取得した場合にかぎられます。
支給対象者一人当たりの助成金の支給額については上記の通りで、支給対象となるのは1企業につき1年度に一人まで。過去3年以内に男性の育休取得者が出ている企業は対象外となります。
男性の育児参加を促す施策については、先日、厚労省が法定の育児休業期間の延長に合わせ、母親が育休延長を希望する場合はその一部を父親に割り当てることを義務付けるしくみ――いわゆる「日本版パパ・クォータ」制度の導入を検討しているとの報道もありました。アメ(助成金)とムチ(義務付け)の施策が、20年までに13%という高い目標の達成にどこまで寄与することができるでしょうか。