インフレ手当
[インフレテアテ]
「インフレ手当」とは、急激な物価上昇を背景に、従業員の生活費を補助することを目的とした手当のこと。手当を支給し従業員の生活上の不安を軽減することで、従業員エンゲージメントの向上などの効果が見込めます。昨今の相次ぐ値上げは従業員の家計を圧迫していますが、給与は変わらない場合がほとんど。そんな中、他社と差別化するために、手当を支給したり報酬をアップしたりする企業が増えています。「インフレ手当」のほかにも「物価手当」「生活応援支援手当」など、企業によって名称は異なります。
インフレ手当のケーススタディ
値上げラッシュで1世帯7万円の負担増
物価上昇にどう対応するか
商品の値上げラッシュが続けば、家計に大きな影響を与えます。帝国データバンクが食品主要105社に行った調査によると、2022年10月には今年最多となる6,700品目の商品が値上げされ、1世帯あたり年間7万円の負担増となることが試算されています。
値上げの背景にはさまざまな要因があります。コロナ禍から回復したことによる物の需要の急拡大、異常気象による食糧不足、急激に進む円安、原材料価格の高騰など。
物価が上がるのは、悪いことばかりではありません。物価が上がってインフレが起こると、雇用が増え、労働者の賃金が上がり、経済が活性化すると言われます。しかし、現実はどうでしょうか。原材料の値段が上がっている影響などから、企業が賃金を上げるだけの利益を出せるとは限りません。
この状況に、「スタグフレーション」を懸念する声が聞かれます。スタグフレーションとは、景気停滞を意味する「スタグネーション」と「インフレーション」を掛け合わせた造語。物価と賃金が比例して上がるインフレではなく、景気後退で賃金は上がらないにもかかわらず物価だけが上がっている状況を指します。たとえば日本では、1970年代のオイルショック後にスタグフレーションに陥り、家計に大きな影響を与えました。
一方で、従業員の報酬アップや手当の支給により、注目を集めている企業もあります。たとえば、サイボウズ株式会社では、2022年7月から8月にかけて、直接雇用している従業員に、就業時間に応じて6〜15万円の「インフレ特別手当」を支給。株式会社ノジマは、正社員と契約社員の約3,000人に毎月1万円の特別手当を支給すると発表しました。
お金の悩みがあると、人はイキイキと働けず、メンタルにも不調をきたしかねません。生活費を稼ぐため、副業に取り組めば睡眠時間が削られ、本業の生産性が下がることもあるでしょう。手当や一時金によって従業員の不安を軽減すれば、仕事に集中できる環境を整えることができるかもしれません。また、従業員を守るという企業姿勢が伝わり、帰属意識が高まることも期待できます。物価の上昇をどう乗り越えていくのか、企業の姿勢が問われています。