がん対策基本法
[ガンタイサクキホンホウ]
「がん対策基本法」とは、日本人の死因で最も多いがんの対策について定めた法律です。がん対策のための国および地方自治体の責務を明確にするとともに、全国どこの地域でも同じレベルの医療が受けられる環境整備や「がん対策推進基本計画」の策定などを掲げて、2006年に議員立法で制定されました。成立から10年経った16年12月に、「がん患者が安心して暮らせる社会」への環境整備を盛り込んだ改正法が成立。がんになっても仕事と治療を両立できるよう、企業などの事業主に対して患者の雇用継続に配慮する努力義務を課し、国や自治体のがん対策に協力するよう定めています。
がん対策基本法のケーススタディ
がん患者の雇用継続に配慮する努力義務を明記
中小経営者の6割は「仕事と治療の両立困難」
がんになっても安心して暮らせるよう、事業主に雇用継続への配慮を求めることなどを柱とした「がん対策基本法」の改正案が12月9日の衆院本会議で、全会一致で可決・成立しました。法改正を受けて、厚生労働省は同法にもとづく2017年度からの「第3期がん対策推進基本計画」の策定に、患者の就労支援の強化などを盛り込む見通しです。
「がん対策基本法」は、日本人の死因第1位のがんの予防や早期発見、研究に国を挙げて取り組むため、2006年に議員立法で成立し、翌07年に施行されました。それから10年が経過し、成立後初めての本格的な法改正に至った背景には、がん医療の目覚ましい進歩があります。的確な治療を受けて社会復帰を果たす現役世代が増える一方で、通院のために退職を余儀なくされるケースもあとを絶たず、がん患者の治療と就労の両立が新たな課題として浮上。超党派による議員立法で改正法案が提出されたのです。
改正法では、がん患者が尊厳を保持しながら安心して暮らすことのできる社会の構築を法の基本理念に掲げ、がん患者への国民の理解が深まるように努めることを求めました。企業などの事業主に対し、がん患者の雇用継続に配慮する努力義務を課すとともに、国や自治体のがん対策に協力するよう定めています。また、国などが患者の雇用継続や就職に関して企業への啓発を行うことも盛り込まれました。
今回の法改正について、患者団体などは「企業の努力義務とはいえ、がんだけを理由に就労上の不利益を受けないことが法律で裏付けられることは大きい」と基本的に評価していますが、企業側の受け止め方には“温度差”があるようです。がん患者の就労支援に取り組む一般社団法人CSRプロジェクトが今年4月に実施した調査では、中小企業経営者のおよそ6割が、がん患者の仕事と治療の両立は「無理」「難しい」と考えていることがわかりました。
両立が困難と感じる理由をたずねた質問(複数回答)に対しては、「事業規模からして余裕がない」との回答が最も多く、「仕事量の調整が難しい」「がん患者をどのように処遇していいか分からない」「社会保険料などの負担が重い」と続いています。中小経営者として国などに求める支援策については、「休職している社員の社会保険料の会社負担減免」や「がん患者の就労継続に取り組む企業への助成金」などの意見がありました。
同団体が全国の患者300人を対象に実施したアンケートによると、がんの診断後に職を失った人の割合は従業員500人以上の企業が5.1%だったのに対し、500人未満は16.8%と3倍超。企業の規模が小さいほど離職率が高まる傾向がうかがえます。